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パワコン容量よりも大きな合計容量のパネルを取り付ける、いわゆる「過積載」。誰が言い出したのかはよく知りませんが英語でも oversizing とか oversized という表現を使われているので、まあそういうものですね。(ご興味のある方は solar inverter module ratio あたりで検索をしてみてください。パワコンは英語圏では通じない単語です。英語圏では Solar Inverter やら PV Inverter で通じます。)
50 kWのパネルを付けても、実際には50 kW発電することはまれで、昼間でもせいぜい40kW程度が実際のところです。これは、50 kWというのは「結構理想的な光が当たればパネルは50kW発電するよ」という意味であること、また、パネルで発電された電気が売電できるまでの間に、さまざまなロスがあることによります。
それなら、「パネルが50 kWならパワコンは 40 kWでいいんじゃね?」「パネル 60 kWにパワコン49.5 kWでいいんじゃね?」となるわけです。さらにもう少し踏み込んで「もっとパネルを増やしたら朝から晩まで発電量がもっと増えるよね、真昼はパワコンの容量までで頭打ちにされちまうけども」となるわけで、こうすれば、パワコンの台数を減らせたり、「50kW未満」という低圧連系の制約の中でより多くの発電量が得られるわけです。(「パワコン容量とそれにつがなるパネルの合計容量の小さい方」の合計が50kW 未満なら低圧連系できます。)
では、「過積載」はどこまでできるのでしょうか、また、どの程度がコスパが最良なのでしょうか。
まず、どこまでできるのか、ですが、「パワコンさんが許してくれる限り」でしょう。パワコンの仕様として入力電流・電圧の上限や、運転可能な入力電圧の範囲が決まっています。これを守っていれば大丈夫ですよ、とは複数のパワコンメーカーさんの営業担当者さんの談であります。寿命が短くなるのではとの心配もあるようですが、現実的にありえないようなとんでもない過積載でもしない限りは、「朝から夜までフル稼働」はありませんから、それほど気にしなくてもよいのではと考えます、当ブログ主は、ですが。ただし、施工店・販売店さん等によってはやり過ぎは保証の対象から外されることがあるようです。
なお、太陽電池セルの温度が低いほど開放電圧(負荷をつないでいないときに生じる電圧)は上がります。設置する場所での想定される最低気温を踏まえて、何枚直列つなぎにできるかを検討する必要があります。(逆に短絡電流は太陽電池セルの温度が高いほど大きくなります。) なるべくたくさん直列につないだほうが、過積載の趣旨に合いますし、電圧も高くなりますからパワコンが朝早くから動いてくれます。また、ケーブルの数量も減らすことができますから、ロスも小さくなります。したがって、「何枚直列につなぐことができるか」(開放電圧・想定される最低気温から計算)×「いくつ並列にできるか」(パワコンの入力回路数)×「パワコン台数」が、物理的な限度になります。
コスパを無視すれば上の計算結果で「つなげるだけつなぐ」が発電量の最大化ですが、パネルもタダではありませんから、やみくもに増やすわけにもいきません。(「パワコンさんが許してくれるだけエクストリーム過積載」というのもネタとしてはありですが。)
そこで、パネル容量・パワコン容量と、発電量が頭打ちになる頻度の関係を把握することが必要になってきます。(把握なんかいらん、結果だけ教えろという方は、そもそも当ブログをご覧になるようなことはないとは思いますが、結論は某L社さんの製品の構成からすると「1.5倍とか1.6倍程度がコスパよし」ということでよいかと思います。)
で、弊社の「ねぎソーラー」に取り付けた TIGO Energy で得られたデータのうち、比較的天気のよかった2015年2月15日(日曜日)の約2秒ごと・120枚のパネル(1枚310W・方位角真南より西に18度・傾斜角15度(最後列を除く))のデータから、以下のように分析してみました。限られた1日のデータをもとに、「〜な感じ」で結論にもっていっていますので、読み物程度にお取り扱いください。ってこのブログ自体がそうですが。
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1) 分析の対象としたデータ点数は 200万点 (9時間×3,600秒/時間×0.5点/1秒×120枚) でした。
2) 各パネルの発電電力(直流)の最高値の、120枚の平均値は 238.8 W (310 Wに対して77.0%)でした。75.0%以上の発電をしている時間が1時間、73.0%以上の発電をしている時間が2時間、69.8%以上の発電をしている時間が3時間、64.4%以上の発電をしている時間が4時間、57.1%以上の発電をしている時間が5時間でした。
3) パワコンの変換効率94%、その他のロス(ケーブルによる抵抗損失などを想定)を3%として試算したところ、パワコン容量に対してパネル容量を140%以内とすれば、パワコンの容量によって発電がカットされることはありませんでした。
4) 140%→150%にしたところ、発電量は140%→149.36%となり、このあたりで頭打ちが生じ始めます。150%→160%→170%→180%→190%→200%とすると発電量は149.36%→155.73%→160.96%→164.83%→168.65%→171.47%と増えてはいきます。
5) パネル・架台等のコスト(関連する資機材や工事費を含む)を全体コストの60%とした場合、パネル容量を+10%することは全体コストを+6%することになりますから、発電量もできれば+6%はほしいところです。この場合には160%くらいまでがコスパ的は受け入れ可能ではないかと思われます。これを超えると「コストをかけたほどは発電量は増えない」な感じです。ただし、これはあくまでも2月の晴天時「のみ」を想定した場合です。
6) 「気温が上がるとその影響で同じ日射量でも発電量は下がる(太陽電池セル温度が10度上がると-4%程度)」「空気中の水蒸気量が多いと近赤外線が吸収されやすいので発電量にはマイナスに作用する」がありますが、「NEDOのMETPV-11のグラフによると2月の同じ時刻と比較して春から秋では1〜2割ほど多く日射量が多い」ので、これらを総合的に勘案すると、春から秋にかけてはもう少しは発電量のカットが生じそうな感じです。
7) そのため、年間を通じてのことを考えると、上記のデータからは「適切な「過積載」率は140%〜160%くらい」「曇などの日射量の低い時間帯の発電量の引き上げを期待する場合や、影がかかるような立地であればもう少し強気に」がいいのかなと思えます。
8) 適切な「過積載」率は、「土地等設置スペースの有無」「パネル・パワコンの仕様」「パネルのみを増やすことによって生じるコスト(パネル・架台・据付工事等)の全体コストに対して占める割合」「コストに対応できる資金の有無(自己資金や借入が可否)」「設置場所の環境条件(気温・日射量・影その他の影響)」「資金を全力で投入するか、次の資金として手元に残しておくか」などに左右されます。
9) とはいえ、適切な「過積載」率を超えたからといって、太陽光発電事業による売電収入が減少したり、利回りが急激に低下するものではありません。適切な「過積載」率はあくまでも目安と考えるとよいかと思います。「パネルが安ければ」&「土地があれば」&「お財布が許せば」&「パワコンが許す範囲で」きりがいいところまではどんどん増やしてみる検討は決して無駄ではないと思います。
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最後のほうは分析ではなく感覚的なものですが、次回は4月の天気のよい日の TIGO Energy のデータで、「エクストリーム過積載」を検討してみます。
「パネルの設置容量をパワーコンディショナーの容量よりも大きくすることで、設備利用率を上げるケース」や「パネルとパワーコンディショナーの容量の比率を最適化する」が「お上」の文書に登場したりする今日このごろですから、いろいろと(せめて紙の上だけでも)検討してみる価値は大いにあるでしょう。
ちなみに海外でも太陽電池モジュールの「過積載」は以前からの関心の対象になっています。
How oversizing your array-to-inverter ratio can improve solar-power system performance
http://solectria.com//site/assets/files/1472/solectria_oversizing_your_array_july2013.pdf
Designing an optimal oversized array
http://www.businessspectator.com.au/article/2014/4/8/solar-energy/designing-optimal-oversized-array
Optimal PV-to-Inverter Sizing Ratio
http://solarprofessional.com/articles/design-installation/optimal-pv-to-inverter-sizing-ratio?v=disable_pagination
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2015年04月19日
太陽光発電のいわゆる「過積載」について最適な過積載率は?(1)
posted by fppv (りょん)@rokutech at 01:00| Comment(0)
| 50kW未満太陽光発電所計画
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